中国の絵巻物などにもよく登場してくる猿の絵。
日本では「お猿さん」の愛称で親しまれているヤンチャで憎めない動物です。木や花などの植物を描くのと比べて、難易度が高いとされる猿の絵。一度テクニックを覚えてしまうと、スラスラと思いのほか描けるようになります。
水墨画で可愛らしい猿の絵を描いていくコツと、手順についてチェックしていきましょう。
描き方
動物が植物とちがうのは、フサフサとした艶のある毛や凛とした瞳があるか・ないかということです。
「まるで生きているかのように」猿を描けるようになると、もうあなたは立派な水墨画の名人。
命を吹き込んであげるように1匹のお猿さんを描いてあげると、生命力にみちあふれた堂々とした絵が描けるようになります。
猿をかくときには、やや薄めた淡い墨をつかって描いていきます。
いきなり筆を運んでしまうと全体のバランスが悪くなってしまう原因に。数回は鉛筆で下書きをしたあとで、筆を運ぶとまとまりのある絵が描けるようになります。
頭・胴体・足はひと筆描きで描くように、続けて描いていきます。頭の上に生えそろった毛は、やや膨らみ気味にオーバーに描いてあげると毛並みの良い可愛らしいお猿さんになります。頭のシルエットがかけたら、耳のパーツを。耳も大きめに描いてあげると、お猿さんのチャームポイントがよくあらわれます。
若いおさるさんはそのまま、高齢のお猿さんはあごの下に立派なひげを加えてあげます。顔の部分に瞳と鼻を筆先をつかって、チョンチョンと描きあげてあげればお猿さんの完成です。
単独で描いても可愛らしいお猿さんですが「小川のせせらぎに佇んでいるお猿さん」「仲間の毛づくろいをしているお猿さん」「赤ちゃんを抱っこしているお猿さん」「草をむしりとっているお猿さん」など周囲の情景も一緒に書き加えてあげることによって、物語のレパートリーは無限に広がっていきます。
コツ
猿の水墨画を描いていくときに、一番難しいなと感じるのが毛並みです。
ベタと墨を付けてゆっくり描き上げていく方法もありますが、それでは上手く質感が出ないと感じるときは「筆割り」という方法を使って描いていきます。
筆割りとは筆の穂先をあえてバラバラに割って、水墨画を描いていく新しい手法です。筆先を割ることによって、ひとつの筆に動きが出てまるで何本もの筆を操っているかのように、繊細で細やかな描写を得ることができます。犬や猫・ニワトリなどの動物を描くときに使われる描写方法で、猿を描く場合でも充分応用することができます。
また「どうやっても、猿が描けない」と悩んでいる方は、絵の構図を少し変えてみることもおすすめです。真正面から猿を描こうとすると、のっぺり平な印象になるものの、少し体全体を傾けて横向き・斜め45度の猿にチェンジしてみると、思いのほかプロのような絵に近づけることもできます。
また猿を描くときに「輪郭のみ強い黒をつかい、内側の細かい部分に淡い墨をつかって描き込んでいく」方法もあります。このテクニックを使うと、メッセージ性の強い力強い動物の絵が描けるようになります。たとえば年賀状の干支をかくとき、お友だちにプレゼントする色紙の中央にイラストを描くときにもこのテクニックは重宝します。
手順
水墨画で猿を描くときの手順について、もう一度おさらいしていきましょう。
- 全体の構図を決める
- 淡く墨をつけて、頭・胴体・お尻の部分を描いてい
- 顔の横にやや大きめの耳を描き加えていく
- 瞳と鼻をかき加える
- 空間があるようなら、近くに小川や草を描いていく
難しいところ
水墨画の猿はプロでも難易度が高いといわれるくらい、ハイレベルなものです。その一方でどことなく人間に似ている風貌から、動物の中でも描きやすい存在といわれています。
水墨画の猿で行き詰ることが多い点として「目をどうやって描いたらいいのか、よく分からない」という問題があります。
瞳は凝りすぎてかいてしまうと力強くなりすぎ、まるで相手を威嚇しているような怖もての猿になってしまうため要注意。最初はポンと墨をのせる勢いで、黒い点をかきいれていくと良いでしょう。
少しずつ自信をつけてきたら、より臨場感のある瞳に近づけていきます。黒い瞳の中央に、白い空間を残してあげると、柔らかい穏やかな瞳になります。
目をうまく描くのはとても難しい動作のため、最初からうまく描けなくて大丈夫。数をこなしていくうちに、だんだんとコツが分かってくるようになります。
まとめ
見ざる・聞かざる・言わざるのモチーフや干支の動物としてお馴染みの、水墨画の猿。
花や木を描くときと比べて難しさを感じてしまう動物ですが、テクニックさえつかんでしまえば思っているよりもたやすく描くことができます。
猿の毛並みが描けないときは筆割りして、ちがう表現を身に着けてみることも大切。小川や草などを周囲に書き込んであげると、より物語性のあるストーリーが生まれます。