水墨画の鳥
水墨画の鳥というのは、墨で描く分だけ、その色使いに留意しなくては、鳥のイメージがなくなってしまいます。
鳥のイメージは、羽が白く軽いものというものがありますので、飛んでいる鳥や、留まっている鳥を描くには、その鳥の羽根の軽やかさをイメージしなくてはなりません。墨色で黒く塗りつぶしてしまうと、鳥の羽根の軽やかさがダウンしてしまいます。ですので、水墨画では塗りすぎないように留意して、描かなくてはなりません。
そして、水墨画の鳥の中でも羽を描写したり、くちばしや目の玉の部分の細密に関しては、毛先の尖った面相筆を使用することが、先決とされます。
大きな紙に大きく鳥を描く場合では、その筆跡上、大きな筆でも問題はないのですが、小さな半紙などに描くケースではその鳥の各部分と、鳥の全体像の対比の為に、細い線を描ける筆を必要とします。
また、鳥がどの様な生態をもっているかは、鳥を抱いたことのある経験があるほど、描きやすくなります。
鳥というのは、その体格に比べて、羽の部分が多いので、実際ほとんど重量を感じないタイプになっています。ですので、鳥が飛んでいるところを描くのであれば、その軽量性という点で、ライトスタイルで描くのが、本物が飛んでいるような姿として、画に描くことができます。
水墨画の雰囲気
水墨画の雰囲気では、墨を塗りすぎるという点で、黒くなってしまうことを避けなくてはなりません。そして、鳥の羽根の色がカラーリングが墨色で出ない際にも、その連結していくモノトーンヴァリエーションにて、それを表現しなくてはなりません。
これは、墨色のコントラスト法を採用します。つまり、鳥の羽のカラーが出るように、イメージングしながら、墨の濃淡を使い分けるのです。インパクトとしては、ブラックの深いところから、下地の白い紙の色まででますので、その中でのヴァリエーションにて、鳥のイメージを付加していきます。
鳥のイメージがつきにくいというのは、それは空を飛ぶ鳥や、留まっている鳥をよく観察していないからになります。ですので、自然の中やシティライフの中での鳥との出会いを大事にしてください。これは、バードウォッチャーという観点でも、鳥愛好家であることが、より良い水墨画の鳥を描く手法となるわけです。
水墨画の環境設定
水墨画の環境設定では、そのモチーフや生物がどのように設定されているかが重要な点です。
水彩画や油絵ではその見たままの景色や静物を描きますので、そのリアルなままが表現されます。
水墨画では、その色彩感覚に於いても、見たままではなく、白と黒の濃淡で表現されますので、肉眼で見ている実体が、どのように脳の中で白と黒のコントラスト・グラデーションに変換されるかがポイントになります。つまり、白と黒の再考性が必要になるのです。
水墨画で鳥を再現するのには、鳥がどの様な環境にいるかを描かなくては、その鳥が存在しているようには見えません。これは、水墨画としての遠近法としての認識が必要とされるべきです。つまり、空間内にどのように鳥が配置されているかを、水墨画の構図構成と同時に、描かなくてはなりません。
水墨画における鳥の表現に関しては、飛んでいるのであれば、空が必要ですし、また留まっているなら、鳥の留まっている支持体が必要になります。それを、デッサンの習作として、力量を上げて、画面に構成していきます。
水墨画では、そのイメージ力における伝達性が高まりますので、色彩を愉しむタイプのカラー画とは違った様相が必要です。
水墨画での鳥のイメージ
水墨画での鳥のイメージは、その伝達性から入っていきます。つまり、鳥を作家自身がどのように認識しているかがポイントです。
鳥の羽根が綺麗だとして、その羽根の一枚一枚を描いたとしても、全部の羽を描けるわけではないのです。そして、鳥の眼が好きだとしても、あえて、黒く描きすぎれば、全体の紙面上の構成力がへたれを見せ始めます。
これは、水墨画における全体調和の考え方ですが、墨というコントラスト色の強い顔料になりますので、その淡いグレーに依る色彩をどれくらい盛り込むかに依って、そのヴァリエーションが広がるのです。
鳥であれば、その飛んでいるところや、木々に留まっているところに、何かを想う人間の想念が必要とされます。そして、その想念から描きたいという欲求が生まれるのが、絵を描く人の心持ちになるのです。これらの、想念から、水墨画を仕上げていくという段階で、たしかに視覚者への意識も必要になります。
この意識とは、鳥という動物がどのような生き様をもっているのかと深く関わっています。例示すると、鳥の哲学的様相を理解し、その環境設定にはめ込むことで、より日本画風に近い作風にもなります。
描写的に細密に描くのは、それは生物学者のしごとなります。生物学者のはたらきでないのであれば、水墨画の鳥というものは、作家にとってどのように映るのかが、極めて大きなポイントです。