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水墨画におけるドーサ液の役割!使い方は?




墨一色で表現される絵画、水墨画。人や動物、山や川、この世の森羅万象を描く水墨画は誰もが目にしたことのある芸術のひとつでしょう。
墨の濃淡、ぼかし、にじみ、グラデーションや筆の動きによって色彩感や立体感などを表現する水墨画は東洋独自の絵画です。
水墨画は唐時代の山水画に始まり、その後朝鮮、日本に伝わりました。

日本では鎌倉時代後期から南北朝時代にかけて禅宗と共に入ってきたと考えられています。当初人気のあった作風は本場中国の人気絵師たちのタッチを参考に描いた
たものでした。しかし、古典技法に飽きたらない絵師たちは次々と新しい技法や表現を取り入れ、流派も増えて多様化していったのです。

今回は、水墨画でドーサ液の役割について紹介します!

水墨画の技法

ドーサ液の役割を説明する前に、水墨画でなぜドーサ液が必用な場合があるのか?
水墨画の技法によってドーサ液を使う時、使わない時があります。

まずは、そこから説明していきたいと思います。

水墨画は様々な技法を用いて描かれます。例えば墨の濃淡を使い変化を表現する墨技法、筆に水を含ませる量や筆先の作り方によって表現する筆技法などがあります。彩色画でも水墨画の描法で墨が主、色が従のものも水墨画として扱われます。

水墨画の基本用語「ぼかし」「にじみ」「たらしこみ」

「にじみ」とは

霧にかすむ様子や雨後の山水など多くに活用される技法で主ににじむ紙を使用します。まず、水をふくませた筆の先に墨をつけます。筆先の墨、真ん中の墨と水が混じりあったところ、水のところ、と3層になっていることでグラデーションができるのです。筆を運ぶスピードと墨の色によってにじみ方が変化することで偶然にできる色ができる趣きのある技法です。

「ぼかし」とは

あらかじめぼかしたい場所に水をたっぷり刷毛でひいておきます。そこに墨で描くと「ぼんやり」とした表現ができます。雲や霞を表現するのに適した技法です。

「たらしこみ」とは

にじみのおもしろさを生かした日本画特有の技法です。俵屋宗達が創案したと言われ、琳派の画家達が多用しています。
その描き方は墨などで絵柄を描き、乾ききらないうちに別の墨を重ねることで最初の墨と後から加えた墨が自然に混ざって特有のにじみを作ります。

にじみやぼかしを表現する上で、大切なもののひとつが和紙です。上質の和紙は丈夫で適度に水を吸うので水をふんだんに使って筆を重ねる水墨画の技法に適しているのです。しかしにじみやすい分ほんの少しの筆づかいの違いや墨、水の量で自分の思った表現とは違うものになってしまうこともあるでしょう。油絵の場合、自分の思った表現と違う時には既にキャンバスに描いてしまったあとでも絵具を取り除くことができますが、常に一発勝負で描きなおしがきかない水墨画では墨をコントロールすることがとても肝心になってくるのです。

にじみをとめたい、思い通りのぼかしを表現したい!

そんな時に多くの人が利用しているのが

ドーサ液(礬水)です。

ドーサ液をつかうと「にじみ」を防ぐため墨をコントロールしやすくなるのです。

ではドーサ液とはどのようなものでどのような性質があるのでしょうか。

「にじみ」をとめるドーサ液

ドーサ液とは膠(にかわ)とミョウバンを混合した水溶液です。膠はタンパク質の一種で主に動物の皮や骨などに含まれているコラーゲンを加工して作られています。古くから使用されている接着剤でもありますが、日本画の顔料や箔を定着するためにも使用されています。また書作品や日本画などの和紙や布のにじみをなくしたい時にも同様に使われているのです。
しかし、どうしてドーサ液を使うとにじみが抑えられるのでしょうか。

その仕組みはこうです。

液を塗った紙の繊維と繊維の隙間にドーサ液に含まれている膠が入り込んでしっかりと膜をはるためです。それなら膠と水だけでいいような気もしますよね。ところが膠だけだと耐水性がありません。せっかく入り込んだ膠が定着せずに溶け出してしまうのです。そこでここで活躍するのがミョウバンです。ミョウバンを混ぜ合わせることにより液に耐水性ができて膠が溶け出すのを防ぐのです。

たった3つの材料でできるドーザ液は簡単に手作りすることもできます。その材料とは膠・生ミョウバン・水。まず鍋に水と膠をいれ沸騰しないように煮溶かします。完全に溶けてからミョウバンを加えます。この方法で一度に大量のドーサ液を作ることができます。

大きな紙全体に使用する場合や厚い紙に引く場合にはちょうどいい量かもしれませんが、「たらしこみ」などで一部だけ使いたい場合には市販のドーサ液がおすすめです。ドーサ液に含まれる膠は動物性たんぱく質であるコラーゲンでできているためそのままでは腐敗しやすく、ミョウバンも再結晶化しやすいため、保存には向いていないのです。

また、配合によっては仕上がりに差ができてしまいます。

ドーサ液の使い方

使用目的別にドーサ液の使い方をご紹介します。

紙全体のにじみ防止の場合 (ぼかし表現にはドーサ引きされた紙を使用すると描きやすい)
紙(布)全体にドーサを引きます

1.ドーサを引く紙を毛せんや毛布の上におきます。
(液が染み出してくるため)
2.刷毛にドーサをたっぷりと含ませます。
3.紙の表面に同一方向にゆっくりと紙に染みこませるようにしながら引きます。
(一方向に引くことで紙の毛羽立ちを抑えることができます)
4.乾燥させます。
5.裏面に表側の倍量の水で薄めたドーサ液を上と同じ要領で引きます。
(裏面に引いたドーサが表面ににじみだした場合、ちゃんと引けていない証拠なのでもう一度乾いてから裏返して引きなおします)

「たらしこみ」で使用する場合

一度目の墨で描いたあとにドーサ液を必要な部分にのせていきます。
このとき必ずドーサ液に使用する筆は墨の筆と違うものを使います。

「白抜き」の効果をだしたい場合

墨を入れたくないところにドーサ液を塗ります。
(塗った所が墨をはじいて白く抜けます)

「にじみ」の少ない乾いた表現をしたい場合

水の代わりにドーサ液を墨に適量混ぜて描きます。

シンプルな分、誤魔しのきかない究極の芸術のひとつ水墨画。
筆のタッチや墨、紙によって表現が変化していく新しい発見はまるで自分だけの世界を作り上げているように感じる方も多いでしょう。墨を自由自在にコントロールできるドーサ液は水墨画で自分の世界を描き出すために必要な大切なアイテムのひとつではないでしょうか。




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