人生の箸休めとしてオススメしたいのが、水墨画です。
流れる水のように繊細なタッチが自慢の水墨画。黒というひとつの色彩のみで表現された世界観は、本当に美しいものです。今回は一度はぜひチャレンジしてみたい「水墨画で野菜を描く方法」をご紹介したいと思います。ヘルシーな旬の味覚を、紙の上でも味わってみてくださいね。
描き方
水墨画で野菜を描くときには、まずは題材を決めてから書き始めることが大切。
同じ野菜といっても、トマトと茄子・トウモロコシやさやえんどうでは姿カタチが全く異なってくるからです。
できれば畑に出かけてみて生の野菜がなっているところを観察してみたり、スーパーの青果コーナーに足を運んで野菜の本当のカタチを観察してみることもおすすめ。記憶に残すのが難しい場合には、お好きな野菜をひとつかふたつ買って、見ながら描いてみると思いのほか筆が簡単に運びます。
手始めとしておすすめしたいのが、トマト。
薄墨をつけて、右と左に半円を描きハートのような形を描いていきます。ハートの向こう側にモクモクとした入道雲を2つか3つ描き、立体的な形にします。つづいて濃い墨にもちかえて、ヘタの部分を描いていきます。
トマトのヘタは近くで見るとよくわかるのですが一見平らに見えても、はじっこの方が上へ反り返っています。この反り返りをうまく表現してあげると、トマトらしく見えます。
ヘタを描くときはなるべく細い筆で描き、細い線を重ねながら下から上へそり反っているヘタの葉をかいていきます。最後にハートの空洞部分に柔らかいぼかしを加えてできあがり。みずみずしいトマトのツヤっぽい仕草が、充分表現された作品になります。
コツ
野菜を描くときに「難しいな」と感じるのは、素材それぞれの質感です。
黒ひとつの世界に思われる水墨画の世界ですが、淡い黒・濃い黒・グレーっぽい黒と墨の度合いをかえることによって色彩にメリハリを付けることができます。
たとえばキュウリやウリのような色が薄い野菜は、白に近い淡い黒で表面をさっと塗っていきます。このとき背景の白と交じってしまいそうな淡さがコツ、野菜のイキイキとした美しさを際立たせることができます。
また茄子やブロッコリーなどの色の濃い野菜は、濃い黒をつかって荒々しく仕上げていきます。
オクラやキュウリのように表面にプチプチしたトゲがあるものは、水玉をうつ勢いでトゲを描いてあげます。
野菜の質感を意識して墨の色合いをかえたり、トゲやヘタなどの細かい部分を付けくわえてあげることで、野菜それぞれの良さが際立つ作品が生まれていきます。
手順
水墨画で野菜を描いていくときのステップを、一緒にチェックしていきましょう。
- どの野菜を描くか、テーマを決める
- できれば実物を見て、野菜の質感を観察しておく
- ハートのようにふくらみを描きながら、輪郭を描いていく
- 輪郭よりやや濃い筆で、ヘタの部分を描写する
- 野菜の表面をあわくペイントし、完成
難しいところ
水墨画で野菜を初めて描こうとすると、ずいぶんずんぐりむっくりなシルエットになったり、いびつな形に仕上がってしまうことがあります。
よくある質問をまとめてみました。
スーパーに並べられた野菜はどれも真っすぐ、規格内におさまっている優等生ばかりですが、実際の畑に植えられた野菜を見てみると、曲がったキュウリもあればカボチャのようにムックリ太ったトマトもあります。
「みんな同じように見えて、少しずつ違う」のが自然の野菜たち。どれひとつとして同じものは無いのだと割り切ってしまうと、案外筆が進むものです。
少しくらい輪郭がゆがんでいても、少しくらい墨が濃すぎても初めてならOK。失敗もまた愛嬌だと思いながら、とにかく描いてみること。回数を重ねていくうちに筆の運び方がなめらかになり、自分が描きたいと思っていたカタチがすぐに作れるようになります。
ひとつの野菜を集中して描くことで自信がつき、色々な野菜を描く上での基本的なスキルも習得できるようになります。
しだいに見なくても野菜がスラスラ描けるようになります。こうなったら次のステップに進み、一度に2種類・もしくは3種類の野菜を描いてみることにしましょう。
このとき気を付けることはバランス。うまく紙に収まるように、小さめの野菜と大きめの野菜を組み合わせるなどの心がまえが必要になります。
まとめ
水墨画で野菜が描けるようになると、世界がグンと広がっていきます。野菜それぞれの質感を意識して描いていくと、生命力みちあふれる力強い野菜が描けるようになります。最初は1種類の野菜を、慣れてきたら3種類程度の野菜を描いてみるのがおすすめです。